なら思春期・ 不登校支援研究所

Ⅰ子どもへの対応、かかわり方について 11件

1.昼夜逆転はどうやってなおせばいいですか。朝は起こした方がいいでしょうか?

ゲームやネット動画を見るなど、生活リズムが乱れて昼夜逆転になる子どもがいます。朝はカーテンを開けて朝日を浴びるようにする、夜はPCの画面を見ずに早く休めるようにする、等々、昼夜逆転を防ぐ工夫はあるかもしれません。しかし、不登校の渦中では、“昼夜逆転は隠れ蓑”となっている場合もあるでしょう。つまり、朝、起きていると、周りからは「学校に行こう」というプレッシャーや、「学校に行ってくれるのではないかな」と期待を掛けてきます。しかし、なかなか登校は難しい・・・。それを説明する言葉も持たない・・・となると、寝ている(寝ているふりをする)方が辛くない・・・となる子どもたちの存在です。不登校の多くの子どもたちと接してきた私の経験からいうと、保護者の方の努力と工夫で昼夜逆転が改善できたというケースは、多くはありません。しかし、なかには、朝起きれるように前夜から徹夜して頑張るなど、涙ぐましい努力をしている子どももいます。その一方、子ども自身が「明日は、このイベントに行きたいから」「明日は、早朝からゲームの販売があるから」という理由があると、案外、すっと起床できるケースも珍しくありません。そういう意味では、子どもが「明日は起きよう」と思えるような“理由”を一緒に見つけたり作るというのも一つです。
 ただ一方、朝起きるのが辛い背景に、起立性調節障害や低血圧という身体側の原因が潜んでいる場合もあります。この場合は、子どもの“やる気”や“根性”ではどうにもなりません。こうした症状が疑われる場合は、念のため、病院での診察を受けてみることもお勧めします。

2.近頃小さい子のように甘えてきますが、どうしたらいいですか。

思春期や青年期になっても、不安や悩みがある時に“退行(赤ちゃん返り)”したり、スキンシップを求めてきたりという現象はよく見られます。子どもによっては、親へのひどい反抗と赤ちゃんのような甘えを交互に繰り返すようなケースもあり、親の方が混乱してしまうケースも少なくありません。反抗や暴力により、自分を受けとめてくれるかどうかを試し、そこで大丈夫と思えた相手に甘えを出すということもあると思います。この赤ちゃん返りは、一時的なもので、そのまま本当に成長が止まってしまうわけではありません。十分に甘えることができれば、年齢相応の行動に返っていくことがほとんどです。あまり心配せずに、甘えを受け止めてあげていいと思います。
 ただ、その甘えがあまりにも度を過ぎているとか、ひどい暴力を伴うなどの場合は、一時的な退行なのか、治療等が必要なものなのか、親だけの判断では難しいと思います。そんな時は、ちょっと専門機関に相談してもいいかもしれません。

3.学校に行っていないのに、習い事や部活だけいかせてもいいのですか。

“学校に行かないこと=病気”ではありませんので、家にこもっていないといけないということはありません。もし、子ども本人が、習い事や部活に行きたいというなら、それが可能なように手助けをすることも大切です。たとえば、部活であれば、学校側の理解や協力も必要になりますし、周りの友だちへの説明をどうするか(周りの理解がないと、「学校を休んでいるのに、部活だけ出てきてずるい」という反応を直接ぶつける場合もありますので)、事前に本人の気持ちを確認しつつ、学校と相談しておくことで、本人の思いを叶えることは可能です。
 学級に入ることはできないけれど、部活動での人間関係ができ、そこが居場所になれば、部活動を拠点として学校生活に戻る可能性も広がります。もちろん、最後まで部活動だけ参加し、卒業していく子もいます。部活動以外にも、学校行事(たとえば遠足や文化祭など)だけ参加できる子についても同様です。学校の協力と、周りのお友だちの理解を得ることができれば、部分登校も大きな意味があります。
 ただし、高校になると、授業に参加するか、その代替のもの(レポートや作品の提出、ボランティアへの参加など)がなければ、その科目が「欠課」扱いになり、進級条件に引っかかるケースも出てきます。ただ、それでも、部活動や行事への参加が次へのステップや自信になることは多いので、そこから進めていくという道も、大いにあり得ます。

4.家でゲームばかりしてゴロゴロしています。ゲームを取り上げた方がいいですか。

一般的に、<ゲームやネット動画にのめり込むから、朝起きれなくて、その結果、不登校になる>と考えられることは少なくありません。しかし、そういう子どもたちからゲームをすべて取り上げれば学校に戻れるかというと、決してそんなことはありません。ゲームが不登校の原因である場合も、もちろんゼロではありませんが、どちらかというと、不登校になったからゲーム漬けになったというパターンの方が多いように思います。学校に行っていないと、時間は膨大にあります。しかし、勉強する気にもならないし、外出もできない。そうなると、「このまま休んでいていいのか」とか「将来どうなるのだろう」とか、いろいろな悩みが頭の中を駆け回ることになり、非常につらくなります。そんなとき、ゲームやネット動画を見ていると、簡単に時間つぶしができます。そういう意味では、ゲームは逃避のための手段になっているともいえるでしょう。また、子どもによっては、ネット上のゲームの対戦相手だけが、交流できる唯一の人である場合もあります。そう考えると、取り上げることには、功罪両方あることがわかります。もし可能なら、子どもと一緒に「体を壊さないよう、時間を決めよう」と、親子で話し合うことも(簡単ではありませんが)意味はあるかもしれません。多くの場合、ゲームより楽しいことややる意味があることが見つかると、ゲームから徐々に離れていく子どもたちの方が多いように思います。

5.家では落ち着いていますが、学校に行く様子が見えず、引きこもりにならないか心配です。

いろいろと親子で悩み、辛い思いをされたと思いますが、今、家庭で落ち着いた時間を過ごされているとすれば、それはお子さんにとって、とても大事なことです。まずは、安心できる空間で、心のエネルギーを溜めることが必要となります。心に余裕が出てくれば、ちょっと散歩に出たり、近くのコンビニに買い物に出かけたり、少しずつ外に足が向くようになることがあります。ただ、家では落ち着いていても、制服姿や同世代の子どもの姿を見るだけで怯えるような状態では、まだ外に出るのは難しいと思います。もう少し、エネルギーを溜める必要があるでしょう。
 少し前の文部科学省の調査を見ると、不登校をしている中学3年生たちの9割近く(85%)は、進学しています。現在は、進学率はもっと高くなっているのではないかと思います。地域の適応指導教室やフリースクールなど、次の進路に行くための練習ができる場も増えています。そして、高等学校にも通信制や定時制、ほとんど通わなくても卒業できるネット上の高校まで、その内容も多様化しています。親子で探せば、きっとお子さんに合う進路が見つかると思います。本人が動かないとすれば、まず親御さんだけでも学校見学や学校説明会に参加し、「いろいろな道があるよ」という希望をお子さんにも伝えてほしいと思います。

6.おなかが痛い、頭が痛いと言いますが、病院ではどこも悪くないと言われます。

学校に行けない子どもたちが、登校する時間帯に「頭が痛い」「お腹が痛い」「吐き気がする」などを訴えるケースは多いです。それで心配したご家族が病院に連れていき、診察してもらっても、どこも悪いところは見つからない。その結果、「この子は、学校に行きたくないから仮病を使って、親を騙そうとしているのではないか・・・。実際、午後になるとケロッとしている。。。」と不安になる親御さんもいます。もちろん、学校に行かない理由として、頭痛や腹痛を訴えるケースもありますが、まったくの仮病というわけではありません。朝、元気にしていると、当然周りは「学校に行けるはずだ」と期待やプレッシャーを掛けてきます。学校に行けない時には、そのプレッシャーがものすごく辛いため、内科的な病気ではなくても、本当に頭痛や腹痛が起こることもあるのです。心の痛みが、体の症状として表現されていると理解することもできます。ただし、ごく一部では、何かの病気の症状として起こっている場合もありますので、子どもの同意が得られるのであれば、安心のためにも診察を受けることには意味があるでしょう。
この精神的な要因から起こる頭痛や腹痛は、周りの反応(プレッシャーや叱責など)がなくなれば、自然に快方に向かいますので、まずは気持ちが楽になるように一時的に休ませてあげるのも一つですね。

7.行ったり行かなかったりの状態です。このまま不登校になってしまうのではと心配です。今できることはなんですか?

行ったり、行かなかったりだと、いつ行かなくなるのかと思って親の方もドキドキしますよね。ただ、行ったからよかった、行かなかったからよくないということをあまり親の方が強く意識しすぎると、子どもはよりつらくなるかもしれません。少しずついかないことでも元気を取り戻していくようであれば、今は行かないという選択もありかなと思ったり、行っていてもあまりにも辛そうだったら、行くことだけで喜んではいられないですよね。行く行かないということも確かに気にはなりますが、子どもの様子や生活など全体をみて声がけをしたりしてみてください。
また、もし不登校になったとしても、学校とのつながりを親が持つことで、本人が学校の方に気持ちが向いたときに受け入れの準備をしてもらったり、段階的な再登校への相談に乗ってもらったりできるようにしてください。不登校になってもまた登校できることもありますので、不登校になることをあまり否定的に考えすぎないことも大切かもしれません。

8.学校に行かなくなってから、壁や家具を壊して暴れるようにありました。

他人や自分を傷付けることに対しては、周囲の大人が毅然とした態度で止める必要があります。同時に、乱暴の背景にどのような理由があるのかを考え、子どもの言葉にならない気持ちに理解を深めていくことも重要です。特に背景に発達障害が考えられる場合には、事態が複雑になりやすく、一貫して継続的な対応が必要になります。教育相談機関等の専門家にアドバイスを求めてみることも考えましょう。稀にではありますが、精神的な疾患や脳の病気などで乱暴になる場合もありますので、医療機関に相談することも必要かも知れません。そうした重篤な問題があるかどうかを、まず教育相談機関等の専門家に相談してみることもできます。

9.学校に行かない理由を話してくれません。

子どもが学校に行かなくなると、心配のあまり親はその理由を尋ねるものです。学校に行かない理由や原因をはっきりさせ、それを解決することで何とか学校にいって欲しいのが親心です。しかし、子どもにしてみれば、意図的に隠しているというより、自分でもその理由が分からないといったところが本当のところでしょう。どうしてだか分からないが、学校に行けないといった状態かもしれません。そんな時、お子さんを問い詰めても、逆効果です。そっと見守ってあげてください。担任の先生に、お子さんの学校での様子や友達関係などを尋ね、担任と一緒にお子さんをサポートし、見守る体制を作りましょう。


10.新しいゲームソフトなど高価なものを買ってほしいと要求します。どこまで聞いてあげればいいでしょうか?

どのような経緯で高価なゲームソフトを要求するのか、背景がはっきりしませんが、高価なものを買ってあげれば、子どもが学校に行くというものではありません。また子どもの無謀な要求に対して、学校に行って欲しいがために親が応じるということは、子どもにとって教育的ではないと思います。我が家のルールを作り、そのルールの範囲で買えるものはものは買う、買えないものは買わないといった毅然とした態度を崩さずに臨んでください。

11. 学校に行かないのにお小遣いを要求します。行けば上げるというのは、良くないでしょうか?

学校に行っていなくても、子どもなりに欲しいものや買いたいものがあります。学校に行けないことで、お小遣いまで取りあげられてしまうと、子どもはますます追い詰められてしまいます。たとえ学校に行けなくて、お金を遣う機会がなくても、今まで通り決まった額のお小遣いを上げてください。何か欲しいものができた時のために、きちんと貯金しておくように伝えるといいでしょう。


Ⅱ 家族に関するかかわりや思いについて 11件

1.本人ではなく親がカウンセリングを受ける意味、ありますか。

不登校をしている本人がカウンセリングに来ることは、むしろ稀です。
最初は、親御さんが面接に通われ、その親御さんの変化(機嫌がよくなったり、ため息の数が減ったり)を見て「そんなに安心できるところなら、自分も行ってみようかな」と、子ども自身がカウンセリングについて来られるというケースもあります。
親がカウンセリングを受けることで、自らの行動を見直したり、子どもの気持ちが理解できたりという効果もあるでしょう。しかしそれ以上に、親が安心して不安や怒りを吐き出すことで、肩の力が抜けるという“ガス抜き”の効果が大きいのではないかと思います。
親御さん自身が、しっかり話を聴いてもらうことで、ピリピリやトゲトゲした気持ちが和らげば、自宅での子ども本人への対応にも変化が見えるかもしれません。親の不安が子どもに向かわなくなると、子どもは徐々に安心しゆったりした気持ちで過ごせるようになります。
親子関係そのものの改善につながることも多々あります。このいい相乗効果を生み出すためにも、まずは親御さん自身が、溜まったガスを吐き出し、少しでも笑顔を取り戻すことが大事です。
「親なんだから、苦しんでいる子どもと一緒に苦しまないといけない」という思い込みを捨て、ときには買い物や趣味を楽しむなどの時間を持ち、親自身もリフレッシュする必要があります。親御さん自身のためのカウンセリングも、その一つです。

2.祖父母に不登校だということを秘密にしていますが、言うべきでしょうか。

祖父母は、孫が学校に行っていないと聞くと、ふつうは心配します。そして、親に対し「何かあったのか?」と問いただしたり、「親として何をしているんだ」と責める場合もあるでしょう。ときには、学校に行っていない子ども自身を追い込むこともあるかもしれません。もちろん、心配のあまり感情的になりやすい親とは違い、孫の気持ちを受け留め、不要なことは何も聞かずに庇ってくれる祖父母もいるでしょう。  そういう意味では、どんな祖父母であるかによって対応も変わるでしょうが、「言わねばならない」というルールはありません。学校に行けない子どものサポートをしてくれたり、親の相談相手になってくれたりが期待できる祖父母なら、事実を話して協力を求めるのもいいですが、子どもや親を責め立てる危険性がある場合は、必ずしも言う必要はないと思います。
そして、もし話す時には、祖父母の不安を煽るのではなく、孫を理解し味方になってくれるような方向で話せるといいですね。

3.自分の部屋に引きこもって、食事も自分の部屋で取り、家族とも顔を合わせようとしません。

部屋から出てこないこの子の心の中はどんな感じでしょうか?部屋からでたら、学校へ行っていない自分が責められるのではないかと思い悩み、誰も責めてなくても自分で自分を嫌になっていたりするかもしれません。まずは、安心して家の中で過ごせるようになるといいですね。部屋の外でも安心して過ごせるようになって、いろんな話ができるまで、できるだけあたたかい声がけが必要かもしれません。

4.「自分は生きている価値のない人間だ」「死にたい」などと言います。自殺を図るのではないかと心配です。

「死にたい」という苦しみ、「価値のない人間」と思ってしまう背景には何があったのでしょうか?こちらとしてはどうしたらいいかわからないし、万が一のことがあったらと気が気ではありませんよね。子どもが「死にたい」という言葉を使ってSOSをだしているのかもしれません。SOSをだすことは、人によってはとても勇気がいることですし、自分の弱みを見られることのしんどさもあると思います。まずは、辛い気持ちを話してくれたことに対して、よく話してくれた相談してくれたと感謝しながら、話を聞いてみましょう。ゆっくりと自分の気持ちを否定されることなく、受け止めてもらえることで安心感をもってもらえるようにしましょう。それは死ぬことを肯定することではなく、あくまで死にたいほどつらくなった気持ちに共感しながら寄り添うということです。そして、背景にある気持ちや状況に辛かったねと共感しながら、どうすればいいか一緒に考えていくよということを伝えると本人の孤立感や孤独感も軽減されるかもしれません。

5.私の子育ての何が間違っていたのか、悲しくなります。「お前の育て方が悪い」「甘やかすからだ」と言って子どもに関わろうとしない夫に腹が立ってたまりません。

確かに、どうしても元気に学校に通う子供たちを見たときに、自分のせいで学校に行けなくなったと思うと悲しくなりますよね。ただ子育てに、正解や間違いはありません。不登校の原因もひとつとは限りませんし、不登校を何か病気のようなこととして捉える必要もないと思います。原因探しをして、それを取り除くことも時には必要かもしれません。例えば、酷いいじめなどのときは、むしろ不登校になることで時として本人の心や命を守ることになりますし、そのような環境の要因は学校と協力して取り除かなければならないでしょう。しかし、はっきりした原因がわからないときやそれを本人が言えないでいるときに、原因にとらわれすぎているとこの質問のお父さんのように、誰かに原因を押し付けたくなることもあるかもしれません。そんな状況になると本人を本来一番近くで見守ってくれている人が苦しくなり、反対に本人を傷つけてしまったり、サポートする力をなくしてしまったりして、今の本人の状況や変化が見えなくなることがあります。できればそのようなお気持ちも含めて、学校やスクールカウンセラーに相談してみてはいかがでしょうか?

6.不登校になるなんて人生の負け組だと父親が言います。

母親としてそのように言われると本人の気持ちを察して辛くなったり、自分の子育てを否定されているように感じますよね。先の質問とも重なりますが、人生に勝ちも負けもありません。自分の子どもが人生を幸福に歩んでほしいと願う親の気持ちは理解できますが、不登校=負けでも不幸でもありません。実際、不登校を経験して大人になったり、社会人になった方でも、不登校の体験があったからこそ今の私があるという風に受け止めている方もたくさんおられます。

7.学校に行っている兄弟が,家でゲームばかりしてずるいと言います。

学校に行っている兄弟から見れば,家で好きなゲームをずっとしている,ずるい,と思っても仕方がないところがあります。兄弟の年齢に応じて,いまは学校にいくエネルギーが足りなくて家で充電しているところ,などの説明をしてあげるといいかもしれません。また,どうしても不登校の子どもに気持ちが向きがちになることもあるので,学校に行っている兄弟とも一緒に過ごす時間を作るなどして,意識的に気持ちを向けてあげられるといいと思います。

8.1日家にいるのだから,少しくらい用事をお願いしてもいいのでしょうか。

子どもの状態にもよりますが,落ち着いているようなら,用事をお願いするのはよいことだと思います。簡単で必ずできることから始めて,できたらしっかりと感謝を伝えて下さい。子どもにとって,自分にもできた,自分も役に立っている,と感じることは,自信につながります。少しくらい出来が悪くても,もしかしたらやり直さなければならなくても,まずはやってくれたことを褒めましょう。「ありがとう」「助かったわ」と言われる経験は子どもにとってとても大切なことだと思います。

9.みんなが自分を見ているようで,電車やスーパーにも行きたくないと言います。

不登校の子どもは,人の目に敏感になることが多いようです。特に,自分と同年代の目が気になるという子どもや,中には学校の制服を着ている人が怖いという子どももいます。そのことから,登下校時間は外に出たくないという子どもは少なくありません。学校に行っていないことを気にしているからこそ,みんなに責められているような気持ちになるのかもしれません。そんな時期は無理に外出せず,まずは安心できる場所(家)でエネルギーを蓄えるが大切です。どうしても外出が必要な場合は,人が少ない時間を選び,特に同年代の学校に行っている子ども達の登下校の時間を避けると少しでも安心できるかもしれません。

10.家では元気にしていますが,学校に行く気はまったくないように見えます。登校刺激はしないほうがよいのでしょうか。

登校刺激については,いろいろな意見がありますが,した方がいい/しない方がいいと言い切れるものではありません。その子どもの状況にもよりますし,同じ子どもでも時期によっては,登校刺激をしない方がよいとき,した方がよいときがあります。子どもによって,復帰のきっかけや時期は様々です。例えば,中学入学,高校入学や大学入学などの節目,修学旅行や体育祭などの行事などがきっかけになることが多いようです。また,その子どもなりのペースで通信制の学校に通うなど,ゆっくりと復帰していく子どももいます。復帰タイミングを見計らうのは難しいですが,焦りすぎず,子どものペースを大事にできるとよいと思います。

11.兄弟げんかが激しく,下の妹をいじめるのでどうしても叱ってしまいます。

兄弟げんかでは,つい上の子どもを叱ってしまうことが多くなってしまいますね。妹をいじめてしまうのは,もしかすると「僕を見て」というメッセージかもしれません。落ち着いてからじっくり本人の言い分をきいたり,ハグしたり,年齢に応じた方法で「あなたのことを大切に思っている」という気持ちを伝えられるといいかもしれません。

Ⅲ 学校や先生とのかかわり、進学や将来への思いなどについて 10件

1.先生が家庭訪問にきてくれても会わないのですが、断ったほうがいいですか。

学校に行っていない時に、学校の先生から電話や訪問があるのは、子どもにとっては負担になることもあります。それは、先生が嫌いだからというのではなく、先生という存在そのものが背負う学校の匂いや登校へのプレッシャーを感じ取ってしまうからだと思います。ただ一方で、それまで来てくれていた先生が急に来られなくなると、「先生に見捨てられたのかなあ」「自分のことはどうでもいいのかなあ」と、またマイナスに考えてしまうこともあります。先生と親御さんとがしっかり話ができるのであれば、親御さんから教師に本人の事情を説明し、本人にプレッシャーのない家庭訪問の形を考えるということも大切です。「先生が来たら、絶対に部屋から出ておいで」などと要求するのではなく、本人が嫌なら、会わないとか隠れるなどの権利を与えることも大切です。子どもによっては、授業の進度や受験の情報、不登校の居場所についてなど、実は知りたがっている場合もあります。事前に保護者と教師の間で、本人が何を望んでいるか等、情報提供ができていると家庭訪問が、さらに大きな意味を持ってきます。
一方、家庭訪問は教師にとっても負担になることもあります。たとえば、訪問は教師に無理なく長期間でも継続できる頻度とする、訪問した時も玄関先の立ち話で帰る、本人と会えても学校の話はしない等々、家庭と教師との間で合意ができていれば安心です。

2.高校に行けないのではと焦ってしまいます。

学校に行っていない子どもたちの多くが、「自分に合った学校があるなら通いたい」「安心できる学校なら行きたい」「自分もほかの子たちと同じように、高校生活を楽しみたい」と考えています。ただ、中学校に通うことができていない自分が「高校に行きたいとは言えない・・・」と思い込んでいる子もいます。さらには、それまでの学校イメージから抜け出ることができずに、「あんな辛い場所なら、行かない方がまし」と、行く前から学校復帰を拒否している子もいるでしょう。
 昔の定時制高校とは違い、朝や昼から授業を展開する三部定時制高校や、毎日制服を着て登校する通信制高校、自分のペースで履修計画が立てられる単位制高校、中退しても大学に進学する資格が得られる高卒認定試験、さらにはネット上での授業や学校行事に参加し、ほとんど通わなくても卒業できる新しいタイプの学校まで、高校のイメージは大きく変わっていますし、そんな新しい高校が増えつつあります。
 まずは、学校説明会に参加し、親御さん自身の高校イメージを払拭する必要があります。こんな学校なら行ってみたい(子どもを通わせたい)と思える学校に出会ったら、今度は子どもと一緒にオープンスクールに参加し、子ども自身の感覚で合うかどうかを確かめてもらいましょう。


3.学校に行けない理由を聞いたら、○○ちゃんが嫌だといいます。学校に伝えた方がいいですか。

子どもが学校に行けない理由は実に様々で、その様々な理由が重なりあって学校に行けなくなっているというのが実際のところではないでしょうか。不登校の渦中の子どもたち自身ですら、なぜ自分が学校に行けないのか分からず、途方に暮れているのかも知れません。親御さんにしてみれば、子どもが学校に行けない理由を知れば、そこから何らかの解決の糸口をつかみたいと思うのももっともなことです。しかし子どもにしてみれば、親に学校に行けない理由を尋ねられても簡単に答えられるものではないのでしょう。それでも何とか自分の辛い状況を理解して欲しいと考えます。その結果、自分にとっても親御さんにとっても一番、シンプルで分かりやすい理由を挙げるのではないでしょうか。「○○ちゃんが嫌いだ」という発言がそれです。勿論、お子さんにとって、○○さんは苦手な生徒の一人なのでしょう。学校に行きたくない理由の1つなのかも知れません。しかし「○○さんが嫌いだ」ということだけが、学校に行かない理由とは思えません。もし親御さんが、担任の先生とお話しをする機会があれば、お子さんが「○○さんが嫌いだ」といっていたことを、事実として伝えてみてはいかがでしょうか。担任の先生が、お子さんと関わる上での何らかのヒントになるかもしれません。

4.学校の先生から協調性がないので友達から孤立しがちだといわれました。そのせいで行きにくいのかもしれません。たしかに幼稚園の頃から一人でいることが多かったように思います。どうしたらいいでしょうか。

学校の先生からこのように言われたら、親御さんとしてはとてもショックだったと思います。さらに幼稚園の頃を思い出してますます不安になったことと思います。しかし先生が、お子さんの何をもって協調性がないといったのでしょうか。友達から孤立しがちということも、先生は、何をもって孤立しがちと判断したのでしょうか。そこがはっきりしません。お子さん自身の気持ちはどうなのでしょうか。友達から孤立していると先生が判断したことでも、お子さんにすれば、自分と合わないクラスメートと意識的に距離をおいていたのかもしれません。子ども同士の関係の本当のところは、教師からは見えているようで見えないことの多いものです。まずお子さん本人にクラスメートとの関係について尋ねてみてはいかがでしょうか。本人が、実際にクラスメートとの関係をどのように感じているのか、そこを明らかにすることがまず大切だと思います。そのうえでお子さん自身も何か困り感を抱いているのであれば、担任の先生に助言を求めてみてはどうでしょうか。

5.新しい担任の先生とウマが合わないらしく、学校に行きたくないといいます。 担任の先生を変えてもらうことも無理だと思うのですが、どうしたらいいでしょうか。

子どもにとって新しい担任とウマが合う・合わないは一大事です。また「学校に行きたくない」という発言の背景も複雑です。「ウマが合う先生だったらもっと学校が楽しかったのになあ!」という残念な気持ちもあるでしょう。しかし先生とウマが合わないことだけが「学校に行きたくない」理由とは考えにくいのはないでしょうか。お子さんが学校生活を送る中で、うまく言葉にできないモヤモヤした気持ちがあり、それに「新しい先生とウマが合わない」というわかりやすい理由も加わり、「学校に行きたくない」という表現につながったように思います。勿論、「新しい先生とウマが合わない」こともお子さんにとってはもやもやの原因の一つでしょう。そんな発言が聞かれたときは、新しい先生のことだけでなく、学級での様子や友達との関係など、お子さんのモヤモヤを言葉にする手助けをしてみてはどうでしょうか。あの時、「嫌だった」「辛かった」「悔しかった」など、お子さんから出るマイナスの言葉に耳を傾け、しっかりと受け止めてあげてください。それだけでお子さんは随分すっきりすると思います。そして、お子さんなりに頑張っていることを見つけ出し、それをしっかりと褒め、励ましてあげてください。そういった関わりを繰り返す中で、お子さんは心のモヤモヤを乗り越える力を身に付けていくようです。

6.子どもが学校に行けていないのに参観日や保護者会には行った方がいいのでしょうか。

このような状況は、親御さんにとって悩ましいことだと思います。子どもが学校に行っていなくても、保護者が参観日や保護者会に参加できないということはありません。周囲の保護者の反応や話題を気にしない、参加したことで何か得るものがあると感じるならば堂々と参加して構わないと思います。しかし、そのような会に参加することで何か疎外感を覚えたり、嫌な気持ちになることが予想できるのであれば、欠席も有りだと思います。事前に先生に事情を話し、会が終わったあと、配布物を届けてもらう、どのような話だったのか教えてもらうのも一つの方法です。

7.成績が優秀だったのに、不登校になり、大学進学も無理になってしまい、将来が不安です。

お子さんの年齢は、18歳くらいでしょうか。高校時代に不登校になって中退をされたのでしょうか?文面だけからでは分からないことも多いのですが、親御さんがお子さんの将来をとても心配されていることは伝わってきます。不登校はお子さんにとっても親御さんにとっても辛い経験であり、そのことで将来も閉ざされたと考えがちです。しかし、将来につながる具体的な情報を得ることで、希望は生まれてくるのはないでしょうか。ここでは大学進学について言及されているので、高校で不登校になった場合の大学進学についても道筋について説明します。
全日制高校で不登校になり、出席日数不足で原級留置になったとしても、通信制や単位制高校に転学し、そこで必要単位をとれば高校卒業資格を得られます。また通信制や単位制に転入せず、そのまま自宅にいるような場合であっても、高卒認定試験に合格することで大学受験資格は得られます。このような具体的な道筋が分からないと、お子さんも親御さんも途方に暮れ、将来への不安が募るばかりです。しかし、ある程度の道筋が分かれば、将来への見通しや目標が立ち、前向きになれるのではないでしょうか。インターネットで検索すればさらに詳しい情報が得られます。

8.中学で不登校となり、何とか高校には入学しましたが、また行けなくなり悩んでいます。

親御さんが、さぞやお子さんのことが心配なことでしょう。またお子さん本人も、入学した高校に通えなくなっていることに、大きな不安を抱えていることと思います。中学校と高校はシステムも違います。お子さんがどのようなことに悩んでいるのか、中学校の頃とは違うのかも知れません。また高校の担任は、入学してきた生徒一人一人の中学校のでの様子を知りません。一度、親御さんから担任の先生に相談してみてはいかがでしょうか。お子さんの状況に応じてスクール・カウンセラーに紹介してもらうことも可能だと思います。

9.学校に行けない子どもが行ける場所ってありますか。

お住いの地区の適応指導教室なども、学校に行けない子どもを受けいれています。お住いの地域の教育委員会や学校に問い合わせれば、公的な場所や民間のフリースクールについての情報が得られます。また学校によっては、別室登校用の教室を準備していることも珍しくありません。教室には入れないけれど、別室なら登校できるという生徒も多いからです。これも担任の先生に尋ねてみてください。

10.不登校経験者は将来引きこもりになるのでしょうか。

いま学校に行けないと,ずっと外に出られず引きこもりになってしまうのではないかと心配になりますね。けれども,何かのきっかけで学校に復帰する子どもは少なくありません。例えば,中学入学,高校入学や大学入学などの節目,修学旅行や体育祭などの行事など,復帰のきっかけや時期は様々です。また,その子どもなりのペースで通信制の学校に通うなど,ゆっくりと復帰していく子どももいます。復帰タイミングを見計らうのは難しいですが,焦りすぎず,子どものペースを大事にできるとよいと思います。

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